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この人(アジア出身・男性)は経理・財務のプロフェッショナルで、いつも締め切りに追われて長時間労働をしていました。疎まれたり敬遠されたりすることもよくあるようでしたが、私は連携して仕事をすることが多くあったので、彼の仕事の難しさを理解していました。

「今すぐやらなければならないことだから君に頼むんだけど」と至急の要件を頼まれたり、バスの中で偶然会ったりすると「君は今後どんな仕事をしたいと思っているの」と聞かれることもありました。私は、優秀な人に自分の仕事ぶりを認めてもらえることを喜ばしく思っていました。

話をするために彼のオフィスを覗いてみると、いつも通り忙しそうに画面に向かっていました。

「邪魔をするつもりはないんだけど」と私はドアから覗いている状態のままで言いました。「辞めることにしたのよ。それを直接言おうと思ったから。」

すると彼は顔を上げてこちらを向きました。「今忙しければまた後でいいから」と言う私に、「いや、忙しいけどそれはちょっと聞こうかと思うよ」とキーボードから手を放し、私に入るように言いました。

彼は私の話を真剣に聞いていました。彼はこれからどうするつもりなのかを聞いてみると、「今は職を探すには時期が良くないし、もう少しこのまま様子を見るだろうと思う」と言いました。自分の国でも良い仕事に就くことができるが、子どもの教育のことなどタイミングを考えていると言い、「家族のことが第一だから」と言いました。

「でも今の仕事をいつまでも続けるのは嫌だと思っている。これではまるで機械だよ」と彼が言ったときは衝撃を受けました。細かい業務を伴う毎月の締め、多数のクレームの対応に追われる様子が他人に与える印象通りなのですが、彼自身がそれを言ったことになぜか驚いたのでした。

私は彼が不満をもらすことなく黙々と仕事をこなす姿を思い返し、改めて尊敬の念を抱きました。そして、彼の正直な気持ちを聞くことができた貴重な機会に感謝しました。

ただ人間同士として向かい合えば、相手の本来の心を見ることが可能になります。それは、多くの人が思っているイメージとはまったく違ったものである場合も多く、そこから発見や喜びを得るのは自分自身なのです。

憶測や懐疑心といった不要な重みから解放されれば、穏やかな理解と信頼に基づいた対話ができることを私は実感しました。

まずは、自分が鎧をはずしてみることから始まるのです。

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